「ゼーベック効果」による発電は可能か?発電装置の試作と検証

本稿では熱電効果の一種である「ゼーベック効果」を用いた発電装置の試作機の開発と、その効果の検証について紹介します。

「ゼーベック効果」と「ペルチェ素子」

「ゼーベック効果」は物体の温度差が電圧に直接変換される現象のこと。「ペルチェ素子」は、2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動する「ペルチェ効果」を利用する半導体素子です。

LED電球すら点灯しない?

LEDが点灯する電圧は得られなかった。0.5Vから0.8V程度の電圧で電流も約100mA程度であった。

ゼーベック効果」by おっさんHobbyより引用

ゼーベック効果とペルチェ素子を利用した発電では、LED電球すら点灯しない程度の「微弱な電力」しか得られないというレポートをネット上で頻繁に見かけますが、本稿では「火」を使うことで効率の改善を狙います

コンセプト「ゴミを燃やすついでに発電」

「ゼーベック効果」による発電は可能か?発電装置の試作と検証

ゼーベック効果は温度差によって電圧が発生するので、木炭を使って熱源を作り、その直上に氷水を配置して温度差を無理やり発生させます。

「ゼーベック効果」による発電は可能か?発電装置の試作と検証

今回は木炭を使っていますが、燃えるモノなら熱源に何を使っても構いません。

「ゼーベック効果」による発電は可能か?発電装置の試作と検証

こういった着火用の薪木を使っても問題ないですし、余っている新聞紙などのゴミでも問題ない。とにかく熱を発生させることが出来ればそれで良いです。

「ゼーベック効果」による発電は可能か?発電装置の試作と検証

木炭の熱と氷水との間に発生する温度差から「電圧」が発生するので、バッテリーに回収(充電)して行きます。

「ゼーベック効果」による発電は可能か?発電装置の試作と検証

バッテリーから家庭用の機器でも使えるように、交流変換(AC100V)を行っています。

「ゼーベック効果」による発電は可能か?発電装置の試作と検証

結果、本稿の試作機では定格40Wの蛍光灯を点灯させることに成功しました。

災害発生時などに使用できるシーンがありそうです。昼間はゴミを燃やして火をおこすついでにゼーベック効果を用いて発電(バッテリーに回収)し、夜間にバッテリーから家電を使うことが可能です。

ペルチェ素子と「火」だけを使って発電

次はペルチェ素子を用いて、ダイレクトに「火」だけを使ってLED電球を点灯させる実験を行いました。ここまでの実験では氷水を使って冷却していましたが、以下より「火」のみを使った実験です。

左:ペルチェ素子 / 中央:LED電球 / 右:LED点灯

温度差で発生した電圧によって、LED電球をほぼ100%の出力で点灯させることに成功しました。ゼーベック効果を使って得られる電力は十分な水準があります。

なお、更に具体的な制作方法や、電力効率の検証については以下の記事にて紹介しています。

ペルチェ素子を使った発電機の作り方とその検証